Category: Bloomin’ Flowers  1/2

Bloomin’ Flowers VI : シクラメンに誘われて

Click or Tap!

美しい人を見た。外見が、ではない。身に纏った凛とした空気感が、美しいのだ。黒いロングコートの裾が、風を受けて広がる。彼は静かにそっと、口を開いた。静寂のひと時。その溜め息は、冬の青空に溶け込んで、僕の目を捉えて放さなかった。僕は、恋をしていた。年上の、まだ若い男の人。通っている高校の、美術の先生だ。太っていた。笑顔が、可愛らしかった。ある日冬空の下でその人をたまたま見ていて、そのえも言われぬ美しさ...

  • 0
  • 0

Bloomin’ Flowers V [Trust me : Trust you]

Click or Tap!

この所、雨が多い。じめじめとして、鬱陶しい。今は出先で、傘はない。持って来れば良かった。迂闊だ。雨音は嫌いではない。しかし。この急な雨は、俺を困らせようとしている風にしか思えない。或いはこの雨はひょっとして、あの時の俺の涙なのだろうか。そう思うと急に照れ臭くなって、俺は中華屋の軒先から飛び出すと、最寄りの地下鉄の駅の地上出入り口まで駆け出していたーー。今からひと月前の出来事。父が危篤だった。倒れて...

  • 0
  • 0

Bloomin’ Flowers IV : 徒然小噺

Click or Tap!

水の中に潜る。ゆったりとした波の動きに、暫し身を預けてみる。旅先の海で、シュノーケリング。ゴーグル越しに覗いた海は、魚たちの楽園だった。「気を付けな!握った手綱は、決して離さないんだよ。いいかい?」海の中から聞こえてくる声。俺はどうしたらいいか分からなくて、ただ黙って頷いた。それからずっと、何かある度にその時の言葉を思い出すようになっていた。この時、相方さんは聞いていなかったようで、何も知らなかっ...

  • 0
  • 0

Rebirth -君に贈る詩- [Bloomin’ Flowers III]

Click or Tap!

声が枯れるまで、叫んだ。ただその場に立ち尽くしていた。震えが、止まらなかった。涙が、止めどなく溢れ出てきた。僕らは何故、こんな別れ方をしなければならなかったのだろう。少年はそう、何度も己の胸に問いただした。答えは、出なかった。「それでも、前に進むしかない。」少年は、生きる覚悟を決めた。それこそが、今は亡き最愛の人への弔いになる唯一の事だと、分かっていたから。やがてしばしの時が流れ、少年は最愛の人の...

  • 0
  • 0