三毛猫と白猫 [ミミちゃんズ・ふぁいなる]

空の碧さと海の碧さが交差する。
ここは俺の生まれ育った場所、沖縄。
俺の肌は浅黒いが、別に焼けているからではない。
元々、地黒なのだ。
昔から食いしん坊で鳴らしていただけあって、体はでかい。
今は通っている東京の大学の、夏休み。
「母ちゃん、飯まだー?」
「はいはーい!ちょっと待っててね。」
実は俺、初恋はまだだ。
遅いのだ。
母は言う。
「あんたなんかに、嫁さんの来手なんてあるのかしらねー?」
「ないかもねー。」
俺は適当に返すのだが。
これに父が怒った。
「それじゃ何か?俺達の老後の面倒、お前一人で見るっていうのか?まさか親を見捨てるわけじゃないだろうな?あ?」
凄い剣幕だ。
これでは、喧嘩を売られているのと同じだ。
勘弁して欲しい。
ここで母さんの助け船。
「こんな島で貴重な休みに店の手伝いをしてくれてるだけでもありがたいのよ。あんまり無理な事は言わないであげて。嫁さんの方にも、選ぶ権利はあるのよ。」
最後で腐す辺りが、いかにも母らしい。
「まぁ、それもそうだ。もっともだ。こんな暑苦しいデブ野郎を旦那にしたいだなんて酔狂な女の子は、そうそうおらんだろうからな。無理だとは思うが、お前、少し痩せてみてはどうか?」
また無理難題を。
そもそも骨格から変えないと、スレンダーになどなれっこないのである。
だいたい父も似たようなものなのだから、分かりそうなものなのに。
ここでまたもや母の助け船。
「さ、支度出来たわよ、ご飯!冷めない内にどんどん食べてね。嫁さんよりも、命の方が大事だわ。無理なダイエットは体に悪いわよ!」
こんな風に、この頃は母に助けられてばかりだ。
少しは親孝行もしたいものである。

今日も朝から、店の手伝い。
店とは、父が経営するレストランの事である。
ここ沖縄では、老舗だ。
実は俺は、調理師免許を取ろうと思っている。
父からみっちりとイロハを教わっているので、独学でも行けるだろう。
大学を卒業したら父の店で本格的に働いて、準備が整ったら受験するつもりだ。
大学で学んだ知見や広がった視野を、いずれは店の経営にも活かしてゆきたい。
「いらっしゃいませ。」
早速の来客。
スーツ姿の男性が一人。
お水とおしぼりを置くと、その男性、にっこりと笑ってくれたのだが。
その瞬間、軽い目眩がした。
「君、大丈夫?」
お客さんに心配される始末。
そそくさと奥に戻って、父の手伝いに戻る。
「少し休むか?」
珍しく父がそう聞いてくるので、俺は首を横に振った。

それから毎日同じ時間に、そのお客さんは来店するようになった。

ある日。
父はトイレに向かう。
厨房には誰も居ない。
俺はコップとおしぼりを置いて下がろうとする、のだが。
「良かったら連絡して。友達になろう。」
いつものお客さん、名刺をくれた。
俺は黙って受け取って会釈をすると、名刺をポケットに入れて厨房に戻った。

恋をした。
あのお客さん、俺には天使のように見えていた。
それは、嘘偽りのない真実だ。
まぁ天使とはいっても、当然の事ながら年上ではあった訳であるが。
二十歳を過ぎて訪れた、これが初恋だった。

半年後。
俺はベッドの上で、あの時のお客さんに組み敷かれていた。
彼はテクニシャンだったので、当初は遊び人ではないかと警戒していたが、実際の所はそうでもなかった。
彼の告白で、俺達は共同生活を始める事になった。

島を離れる時、俺達の関係に気付いていた父は、見送りにも来てくれなかった。
仕方ない。
だが母は、涙ながらに手を振ってくれていたーー。

彼はしばらくの間出張で沖縄に来ており、住まいは東京にあったのだ。
大学には引き続き通っていた。
残りの学費を工面してもらえたのもひとえに、母のごり押しが効いたからである。
そうでなければ中退していた。
奨学金など、考えられなかったからだ。
取り立てがとにかく、怖かった。
だから本当に、骨身に沁みてありがたい。
それまで住んでいた寮は、引き払った。

彼は賃貸マンションの一階の部屋に住んでおり、窓辺にはいつも三毛猫が居た。
ある日気が向いて猫を室内に入れてみると、これが喋るのである。
正直、驚きでひっくり返りそうになった。
「こんにちは、私はミミ。この頃少し調子が悪いから、飼ってくださると助かるわ。お礼はいつかきっと、するから。」
そう言われたら、飼う他ない。
正直、お礼は期待していなかった。
喋る猫がいるーーそれだけでも、十分に面白いからだ。

喋る猫、その話を聞ける人間は、限られているらしい。
だが、居ない訳ではない。
むしろそれなりの数は居るのだ。
例えばのちに分かった分も含めると、俺やその両親に泰孝さんと、パッと思い浮かぶだけでもこれだけ居る。

で。
すぐに気付いた事だがミミ、喋るだけあってトイレも粗相をしないし、何かあっても引っ掻く事もないから、実に飼い易いのだ。
これには、島のお店の以前のお客さんでもあった相方の泰孝さんも、感心しきりだった。
餌はとびきり上等の缶詰が、大のお気に入りらしい。
贅沢な奴め。
それはそうと、調子が悪いというのは気掛かりだ。
泰孝さんとも相談して、ミミを二人で動物病院に連れて行く事にした。
結果、内臓疾患という事で、すぐに手術となった。

無事に手術を終えたミミであるが、しばらくの間は静養が必要との事。
野良猫だった旨を告げると獣医の先生、これからはずっと飼ってあげてくださいと言う。
帰ってから「うちの子になるかい」とミミに尋ねると、嬉しそうに「ありがとう」と言ってくれた。
きっとこれまで、病でしんどかったのだと思う。
そのまま放置されていたら、一ヶ月もすれば亡くなっていただろうと言うのだ、獣医の先生。
助かって良かった。
こんなに珍しい猫、死なせていい訳がない。

部屋の窓辺に、小さなチェストを置いた。
ミミの日向ぼっこにちょうどいいだろう、という事で。
泰孝さんの提案だ。
実は泰孝さん、動物はちょっと苦手だったらしいのだが、ミミは賢いから大丈夫、との事。
ミミ、つくづく運のいい猫である。

それからはそのチェストの上が、ミミのお気に入りの居場所となった。
休みの日、ミミや泰孝さんに囲まれて一日を過ごしていると、時間の流れがゆったりとしているように感じる。

引越しをする事になった。
俺の大学卒業がきっかけだった。
泰孝さん、沖縄に魅せられていたのだ。
沖縄支社への転勤を申し出て、認められたのだった。
住まいは、俺の実家だ。
古いが、とりあえず広いのでなんとかなるだろう。
おかんむりの父を説き伏せてくれた母には、感謝してもし切れない。
もちろん、ミミも一緒に引っ越しだ。
きっと店のいいマスコットになるだろう。

出発の前夜。
ミミはたくさんの猫達に囲まれて、嬉しそうだった。
「モモ、ルル、ララ、後はよろしく頼むわね!」
「任せて!ミミ、幸せになって!」
猫同士でじゃれ合う姿はまるで、子供のようだった。

泰孝さんにとっては、住み慣れた家の前。
空は、抜けるように碧い。
出発の当日。
空港へと向かうタクシーに乗り込む二人。
その様子をたくさんの猫達が見届ける。
はたから見れば異様な光景だ。
それでも。
ミミの友達からすれば、そんな事は関係なかった。
たくさんの声に送り出されて、ケージの中のミミは、確かに幸せだっただろう。

那覇空港に到着すると、俺達はタクシーで実家へと向かった。
車から降りてびっくり。
父と母が、門の前で待っていたのだ。
今日は店の定休日だから、大丈夫だったのだろうが。
それにしても、父が居るのが意外だった。
父と母は、笑っていた。
「男同士でも、二人も居れば安心かもな。老後の面倒は、よろしく頼むぞ!」
父がそう言うので、俺と泰孝さんは揃って、親指を立てた。

夜は地元の人も呼んで、宴会。
何と、俺と泰孝さんの仲は、町中の人間に知られていた。
好奇の目に晒されるが、これも仕方のない事。
強く、強く生きるしかない、そう思った。
良い事ばかりは続かない。
当たり前だ。
時には辛抱も必要なのだ。

縁側で、泰孝さんと二人並んで。
「これから、難しい事もたくさんあるかもしれないけど、末永くよろしくな!」
そう言われて、抱き付いてみた。
みんなから、からかわれる。
それでも、良かった。
俺と泰孝さんとの関係、父が公にしたらしいのだが、伝え方が上手かったようで、村八分的な最悪の事態は免れた。
だから、良かった。
ゲイという存在がいかなるものであるか、理解していないような向きもあるにはあったが、まぁいい。
ハブられないだけ、まだマシなのである。
とりあえずこんな感じなので、何とかなるだろう。
この町が田舎過ぎないのが、幸いした。

俺は父に、見た目が似ている。
だから泰孝さん、こう言った。
「親父さんの顔を見て、似てるなって。それで安心したんだ。この分なら一生でも側に居られるだろうから。」
俺は涙が止まらなかった。
この人の手は離してはいけない、深くそう思った瞬間だった。

沖縄に着いてから、ミミは野良の白猫と仲良くしているようだ。
相手は、雄。
カップルの誕生かな?
興味津々。

休日。
俺と泰孝さんとミミと白猫、揃って縁側で日向ぼっこ。
長閑な時間。

黒い影が近付く。
次の瞬間!
酩酊状態の男が庭に侵入、酒瓶を持ってミミに襲いかかった。
間一髪、難を逃れたミミ。
それでもなお、男は怯まない。
ピリピリとした緊張感。
ミミがここで叫んだ。
「あなた、これ以上やったら承知しないわよ!交番の前まで吹っ飛ばしてやるんだから!」
男、驚きで一気に酔いが覚めた様子。
ふらつく足取りで、自宅へと戻っていった。

その半月後。
噂を嗅ぎつけたマスメディアの記者達が猫の喋り声をたまたま聞いて、その映像を隠し撮りしてしまったせいもあって、俺の実家や父のレストランは、観光名所となってしまった。
喋る猫。
最早、社会現象である。
聞こえる人間は本来一部であるはずなのだが、テレビで映像が流れてしまったせいで、人々が押し寄せてしまったという訳なのだ。
店はそのお陰で繁盛しているのだが、当のミミ達はどう思っているのだろうか。
心配だった。
しかし、そんな思いも他所に、ミミは思いの外落ち着いていた。
むしろ、堂々としている。
やがて沖縄には、実際に話し声が直に聞こえるかどうかはともかくとしても、ミミ見たさに観光客が国内外の各所から訪れるようになり、その経済効果は計り知れなかった。

それから、一年が経った。
ミミはようやく、全快した。
ミミのパートナーは、ニーニと言うらしい。
ミミの力のお陰で喋れるようになったばかりだ。
この二匹のお陰で、実家が新しくなった。
キャッシュで建て直したのである。
父が。
前の建物よりはこぢんまりとしてはいるが、使い易いのが良い。
一応、二世帯住宅だ。

ミミとニーニとの間には、子供が生まれていた。
子猫達がまた可愛い。
この子猫達もミミの力で喋れるようにするんだそうな。
この魔法、最近習得したのだとか。
勉強熱心である。
実にありがたい。
と、思っていたのだが……。

それからしばらくすると父の店の前には、喋る猫・ミミとニーニと子猫達の、小さな銅像が立った。
役所からの要望で、是非にという事でそうなったのだ。
最初は気ままに、家と店とを行ったり来たりしていた猫達だったが、この頃はずっとお店の前に陣取っている。
皆猫達を可愛がってくれるので、嬉しいやら助かるやら。

危機は忍び寄っていた。
ミミやニーニ、それに子猫達がちやほやされているのを気に食わないギャング猫達が居たのだ。
ギャング猫達は相談して、夜襲をかける事にした。
全快したミミの事だ。
これは察知していた。
ここでミミ、最近入手したという小瓶を取り出す。
『大丈夫なのか?』
心配しながら見ていると、瓶の中の液体をそこら中に振り撒いた。
するとギャング猫達、へなへなと崩れ落ちた。
「チャンスよ、光彦さん、泰孝さん!ギャング猫達を車に載せて、出来る限り遠くまで連れて行って逃がしてあげて!しばらくは薬の効き目が続くから、なるべく遠くがいいわ。よろしくね!」
結果的には、この危機はこれで去ったのだった。
ミミにかかれば、呆気ないものである。

それからもミミはレストランのマスコットとして人気だった。
危険もあるので、本当は静かな所でのんびりして欲しかったのだが、お客さんの要望ともあれば、そうはいかない。
猫達には常に誰か店の従業員が付くようになった。
大袈裟だが、やむを得ない。

店を増築する事になった。
夏場の炎天下など、長時間お客さんに待ってもらうのが、いたたまれなくなったからだ。
まぁせっかく来てもらった所で、猫達の声が聞こえないお客さんもそれなりには居るのだから、それも申し訳ないので。
店の増築の資金も、猫達のお陰で捻出出来た。
素晴らしい。

だが、悲劇は突如訪れる。
何と猫達、喋れなくなってしまったのだ。
酷使し過ぎたせいで、黒秘岩の力がなくなってしまったようなのだ。
ミミがニーニや子猫達に力を分け与え過ぎたのがいけなかったらしい。
黒秘岩の秘密は、沖縄への移住前夜の宴で、モモから聞いていた。
そういえばモモ、心配していたっけ。
頻繁ではないものの、定期的に黒秘岩の影響を受けていないと、力が徐々になくなっていくらしいので、頑張り屋のミミが無理をし過ぎないか、そんな事を考えて、心を痛めていたのだ。

お客さんみんなの期待には応えたい。
でもこのままだとそれは不可能だ。
だからお店の休業日を月に一日増やしてそこを連休にして、その度に黒秘岩のある場所まで出掛ける事にした。
遠いのだが、仕方ない。
別に北海道に行く訳ではない。
何とかなる。
しばらくの間黒秘岩の側で猫達に寄り添っていると、こちらまで元気になって来るような気がするから、不思議だ。
ここに来るとミミ達は他の猫達と再会出来る。
みんな、嬉しそうだ。

沖縄に戻ると、猫達はすっかり調子を取り戻していた。
心配していたお客さんも、一安心だ。
それにしてもミミ、今時珍しくウインクなどするのだ。
そんな事をする存在など、絶滅したのかと思っていた。
なのでからかってみると、「あら、失礼ね!」と言って、ぷんすかぷんすかご機嫌斜め。
仕方ないので極上の缶詰を今日だけ特別に、三缶もあげてみた。
不公平になるといけないので同じ数だけ各猫にあげるのだ。
まぁ、仕方ない。
身から出た錆とはこの事だ。

で、ウインク、お店では好評なのである。
ちょっと驚き。
得意げなミミもまた、可愛い。

冬。
二人して綾織りの比翼仕立ての薄手のハーフコートを羽織って、海辺をお散歩。
こんなに薄着で街を歩けるのが凄い、と泰孝さんは言う。
ある意味、カルチャーショックだったのだそうな。
考えてみれば、下はTシャツ一枚なのだ。
これは確かに、素敵だ!
さすがは我が故郷、沖繩。
もちろん猫達も一緒、側に居る。
子猫達、大きくなった。
早いものである。

子猫の名前はピピ、ムーム、ハロルドだ。
ハロルドだけ雰囲気の違う名前なのは、ご一興。
特に意味はない。

ちなみに猫達、お店の中だと衛生面での問題が発生する可能性があるので、外のベンチに座っている。
定位置なのだ。
撫でるだけで去ってゆく外国人観光客などにも、ウインクをして、愛想がいい。

親戚の子がやって来た。
しばらく預かるらしい。
面倒は母が見る。
父と俺はお店でてんてこ舞い、泰孝さんも仕事で忙しい。
親戚の奥さん、本当は育てたいのは山々だったのだが、旦那さんが働かない上に暴力を振るうという事で、泣く泣く手放したのだ。
旦那さんとは離婚する方向で考えているそうで。
それはそうだろう。
俺だってもしも同じ立場に立たされたなら、きっと同じ対応を取るに違いないのだ。

みんな、大変なんだな。
自分は恵まれている、この頃とみにそう思うのだ。

季節は巡って。
また冬がやって来た。
まぁそうは言っても、沖縄だから、そこまで寒い訳ではない。
さすがは日本で唯一の亜熱帯である。

親戚の子、名前は雄太と言うらしい。
俺や泰孝さんと同じで、童顔デブだ。
肌の色は、三者三様なのだけれどね。
顔立ちもそれぞれ違う。
泰孝さん、雄太とは適度に距離を置いているようなので、ひとまず安心。
というよりもまだ雄太は、子供なのだった。
何を考えていたのだろう、自分。
嫉妬でおかしくなったか。

喋る猫がたまたまクローズアップされた結果、モモやルル、ララなどに害が及ぶようになっていた。
正直、以前のミミはこのままでもいいと思っていた節がある。
いい加減喋れないふりをするのも辛い訳だし、そもそも猫の話を聞き取れない存在も、一定数は存在する。
もういいだろうと思っていた訳だ。
第一、広まり過ぎた噂の記憶を無理に消そうとすれば、自分達がこの後死ぬまで喋れなくなってしまう恐れがあったというのもあった。

しかし、そうも言ってはいられない事態が続発する。
各地の喋る猫を拉致しようとする不届き者が後を絶たなかったのだ。
これでミミは決意したようだ。
ミミ、ニーニ、ピピ、ムーム、ハロルドは持てる力の全てを使って、世界中の多くの人々から喋る猫の記憶を残らず消す事にした。
「光彦さん、泰孝さん、今まで本当にありがとう!これからは喋れないただの猫になるけれど、これからもよろしくお願いするわね。」
言われなくても、もちろんだ。
俺も泰孝さんも、涙が止まらない。

翌日。
実家や店は、綺麗になった状態のまま。
これはもしかしたらミミからの、最後のプレゼントなのかも知れない。
銅像は綺麗さっぱり消えていた。
設置してあった場所からも、人々の記憶からも。
実に対照的だ。
まぁ銅像なんて正直、要らないのだ。

猫達は店先のベンチでいつも日向ぼっこ。
喋れなくなっても、マスコットぶりは健在だ。
お店に来たお客さんは大抵話しかけたり撫でたりしてゆく。

みんな喋れなくなっても、知能は高いのだろう。
まだやんちゃな子供の雄太がやって来ても、平然といなす。
大したものだ。

季節は過ぎゆき、雄太は母親の元へと帰って行った。
あんまり遊んでやれなかった事には、後悔している。

取材のクルーや喋る猫目的の観光客が居なくなって、店にはのんびりとした空気が戻った。
でも、猫達のお陰もあって、お客さん、それなりには来てくれている。
俺は調理師免許を取得した。
元々手先は器用だし、自分で言うのもなんだが頭も悪くはない。
親の金で島からわざわざ東京の大学に通う為に、上京した位なのだ。
当然だ。

ミミ達がかつて喋れた事を知っているのは、元からミミ達と交流があった人達だけ。
彼らは皆、口が堅いのだ。
だから願いを聞いてもらえた、というのもある。
我が家のみんなもそうだ。
喋れなくなっても、ミミ達の事が可愛くて仕方ないのだ。

ミミは無数の人達を助けて来たらしい。
ようやく定年、そんな所だろう。
人々の記憶からは徐々に消えても、ミミが振り撒いた幸せの数々は消えない。

みんなを幸せにして来たミミ、今度は彼女達が幸せになる番だ。
のんびりとした島の中で、俺達もまた、幸せだった。

お・し・ま・い

修正に次ぐ修正、本当に申し訳ないです。
一応、これで完成のつもりです。
三毛猫と白猫のシリーズは、多分また忘れ去られた頃にやって来ると思うのです。
でも、ミミが主人公のお話は、これで終わりかな。
新たな展開をいつかは考えたい、そう思っています。
ミミが登場する最後のお話になるかも知れないので、光彦と父と母、それに泰孝には、とびきり幸せになってもらいました。
楽しんで頂けましたら、この上ない幸せです。
今後ともこれに懲りずにご愛顧の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
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