ひとけもLOVERS

獣人が跋扈してから久しい地球。
しかし彼らは温厚で、以前からの地球人類が生きていけるように、配慮してくれた。
生き残れただけでも、感謝すべきなのだろう。

時は二十三世紀。
東京大学大学院の苅部教授の研究室にて、ある日。
突然変異的につがいのツキノワグマの獣人が生まれ、繁殖。
もともと東大の研究室には、既に絶滅寸前となっていたツキノワグマのつがいが、繁殖の研究の為に檻の中に入れられていたのだが、これが進化した。
その後も世界各地の大学・大学院の研究室、更には動物園やジャングルなどで同様の事件が次々と発生。
最初は人類は静観していた訳で、危機に気付いた時には既に手遅れだった。
特殊なウイルスが蔓延する事により様々な獣が獣人へと進化し、その数は指数関数的に増えてゆく。
虫さえもウイルスの影響により知性を持ったが、流石にこれは二足歩行とはならなかった。
とはいえ、知性があれば話し合いが出来る。
求められていたのは、獣人や虫、そして人間が共生出来る、新たなる社会の実現だった。

結論を言うと、人類は獣人達の有り余る力に屈したのだった。
ウイルスが原因だと分かるまでに、多くの研究者が罪を被って空の星となった。
苅部教授もまた、その一人である。
一方的な批判に晒されるのに、耐え切れなかったのだ。
教授達の親族の自殺や失踪も相次ぎ、社会問題となった。

その一連の出来事から二十年が経過し、今、世の中はようやく落ち着きを取り戻そうとしていた。
獣人は人間の作った建物を壊さなかったし、一貫してフレンドリーな姿勢を見せ続けた。
一方で、獣人仲間への攻撃に対しては、容赦なかった。

もちろん先にも書いた通りに、地球人類だからといって差別される事はない。
先進国を始めとする国々の国力低下が著しい中にあって、獣人は新たなる優れた労働力となるポテンシャルを、十分に秘めていた。
獣人は、人間と仲間になる道を選んだのである。
国境が変わり、制度や法律、更には憲法、元首や為政者までもが変わっても、地球人の安全は保証されていたのだ。
一部の原理主義者を除いて、地球人もまた、獣人と仲間になる道を選んだのだった。
他に生き残る道はないと、悟ったのである。

そんな中、ある一人の獣人が、人間の少年に恋をした。
これが普通の獣人であればお咎めなしなのだが、その獣人は何と次期国王、プリンスなのだ。
そう、日本は人間とツキノワグマの獣人両者による一族が統治する、王国となっていた。
王族の獣人と、名家の出とはいえ一般の人間。
結ばれる可能性は、流石にゼロに近かった。
それでも可能性があるとすれば、恋をしたのがプリンスの方だったという事だ。
実の所プリンスは、その人間の少年からも好かれていた。
相思相愛なので、プリンスが告白をすれば、その人間の少年も快諾するに違いないのだ。
問題は国王たる父の反応だ。
単細胞な所があるから、聡明な母がとりなしてくれなければ、この話はなかった事になってしまうだろうと、この時のプリンスにはそう思われた。
逆に母を味方に付ける事が出来れば、尻に敷かれている父親は、為す術もないだろう。

獣人にはミドルネームがある。
先のプリンスであれば、バース・ニーノ・ユーヴェ、こんな感じである。
実際には親しみを込めて、国民からはプリンス・バースと呼ばれる事が多い。
ちなみにニーノというミドルネームは特別で、国王とその妻、そしてその直系の子孫にしか使われない。
従ってニーノという表現は、王族への敬意を表する際に用いられる事がある。
これまで一貫して、獣人達の名前は、獣人達が決めて来たのだ。
もちろん、これからもそうだ。
そう、王族の名前とて、獣人達が寄り集まって、知恵を出し合って決めた名前だ。
犬の獣人であっても、もうポチとは呼ばせない、そんな気概が獣人達皆の中に満ち溢れていたのだ。

人間と獣人が共生する世界。
理想郷のようにも思えるが、治安の悪い場所だとギャングが居たりするので、厄介だ。
ギャングとて人間と獣人を差別する事は、表向きはしない。
少なくとも、搾取するのは方法から何を搾取するかに至るまで、平等だ。
良いのやら悪いのやら。

さてプリンス・バース、ツキノワグマの少年である。
学校では、先の人間の少年と同い年の同学年、ついでに同クラス。
当たり前だが、服を着て二足歩行で歩くのである。
その様のまぁ可愛い事。
仲良く歩く二人、まあるい背中が二つ。
と、そこへ。
プライドの無駄に高いライオンの少年が、子分を引き連れて廊下のど真ん中を歩いて来る。
ライオンの少年もまた、プリンス・バースや人間の少年と同学年だ。
残念ながら下級生ではないが、クラスが違うだけでも幸いしたと言っていい。
「邪魔だ。退け!」
ライオンの少年が、プリンス・バースと人間の少年を威嚇する。
人間の少年はともかく、プリンス・バースに威嚇するなど、常軌を逸している。
どうもこのライオンの少年、少し頭が悪いようだ。
この学校の入試では、実力よりも家柄が重視されるので、彼もまぁ家柄はそれなりなのだろうが。
それにしてもプリンス・バース、機嫌が悪い。
「お前が退けば良かろう。お前がそのつもりなら、父上に報告してもいいんだぞ。俺の父上はキング・バーデだ。」
ここでようやくライオンの少年、分が悪い事に気付く。
他人の事には本当に鈍いのだ、このライオンの少年。
「ちぇっ。まぁいい。お前は通してやる。隣の人間の少年、通して欲しくば金を出せ。」
ここはおとなしく払うしか、そう思って人間の少年が鞄から財布を出すと、プリンス・バース、それを制止する。
「何のつもりだ!お前には関係ない筈だ!」
どうやらライオンの少年、我慢の限界らしい。
力ずくで財布を奪い取ろうと、人間の少年に襲い掛かろうとする。
粗野な行動。
後にこれは、悔やまれる事態を生む事になる。

その時である。
この場所でチリンチリンと音が鳴り響いた。
プリンス・バースが手持ちのベルを鳴らしたのだ。
すかさず屈強な獣人が四名現れて、ライオンの少年を制止する。
「犯罪者を捕まえましたょ、ラーベ校長先生。」
プリンス・バースは胸を張る。
騒ぎを聞きつけたこの学園の校長がこうして現れ、事態の収拾は図られた。
ライオンの少年はその場で退学処分となった。
幾ら家柄が良くても、プリンスに楯突けばこうなるのである。
当然の成り行きだ。
この件で、人間の少年とプリンス・バースとの間の絆は、しっかりと長く太くなった。

森の奥深く。
ライオンの少年の親玉が、他人から奪い取った丸太小屋を根城にして、作戦会議を開いていた。
ギャングの面々が顔を揃える。
皆獣人だ。
こうした場面に限っては力の差で、獣人が優遇される訳である。
人間はギャングの一員になれたとしても、下っ端の小間使いがせいぜいだ。

噂はもう、届いていた。
退学になったライオンの少年はその名を、ネメットという。
「ネメットの役立たずめ……。せっかくバースと同じ学年だったのに、上手く利用出来た筈だったのに!退学とは!何と使えない。今度会った時には、その身体を引き裂いてやる!」
内心では可哀想だと思っていたギャングの子分らも、親玉を前にしては何も言えなかった。

翌日。
ネメットの遺体が沢に捨てられていた。
あえて川に流さなかったのには、見せしめの意味も込められているのだ。
ギャングの親玉は現地警察とは内通しているから、真相は闇の中。
ネメット、せめて長期間収監されていれば、まだ安全だったのかも知れない。
微罪だった事がかえって、ネメットにとっては不幸だった。
「お前達もヘマしたらどうなるか、よく覚えておけ!」
「はいっ!」
ギャングの構成員一同に、戦慄が走る。
あの程度のヘマで殺されてしまうのでは流石に、やっていられないのだ。
皆指の一本も差し出す覚悟で、ギャングから抜ける事を、真剣に考え始めた。
それを見透かした親玉、こう言い放つ。
「指の一本差し出した位で、抜けられると思うなよ!反逆者には必ず死んでもらう!」
この瞬間、同様の覚悟がギャングの構成員一同を包み込みつつあったのだが、調子に乗った親玉は、それには気付かない。

しかし、最後には親玉を葬り去るとしても、一同には先にどうしても捕らえておきたい相手が居た。
人間の少年である。
だがまずい事に人間の少年はプリンス・バースと既にとても仲が良く、なかなか隙を見せないのだ。
しかもギャング達にとっては悪い事に、ネメットもまた、名家の子供だったのだ。
そもそも先の通りで、学校からして、名家の出の者しか入れない。
ネメット、家というものへのちょっとした反抗心からギャングに入ってはみたものの、親は冷たいだけで激昂まではしなかった。
実は息子の事は愛していたので、あまり強くは言えなかったのだ。
そこへ今回の事件。
ネメットの父親は国会議員だ。
それも国務大臣級の大物複数と通じている、政権主流派の大物。
ギャングへの規制強化を強力にプッシュした所、快諾を得る事が出来たのだ。

ギャング達にしてみれば、ネメットの父親は警備が堅い為に襲撃は困難だ。
やはりここは、プリンス・バースを狙うしかない。
友人である人間の少年を人質に取れば上手く行くだろう、そう踏んだのだ。
だからこそ、まずは人間の少年を捕らえたい訳である。
人間の少年を捕らえ、それと引き替えにプリンス・バースを確保する。
ここでプリンス・バースの返還を条件に自分たちの身の安全と親玉の処断をキング・バーデに飲ませる事が出来れば、一件落着なのである。
そんな事など露知らず、親玉は親玉でプリンス・バースや人間の少年は気に入らない訳である。
こうして、世紀の茶番劇が始まるーー。

リリットが空を飛ぶ。
魔法使いの美少女だ。
実は彼女、プリンス・バースの妹なのだ。
「お兄ちゃぁーんっ!」
リリットは兄思いである。
「やぁリリット、久し振り。」
兄が手を振ると、リリット、その目の前で着地した。
お約束の、箒に乗っての登場。
「私、リリット・ニーノ・ユーヴェ。ツキノワグマの獣人と人間のハーフです。」
と言いながらもプリンス・バースはツキノワグマにしか見えないし、プリンセス・リリットは人間、それも美少女にしか見えない。
これはこの世界では良くある事だ。
獣人と人間のハーフであっても、どちらかに似るのであって、両者のちゃんぽんにはならないのだ。
誠に以て都合の良い設定なのである。
ついでに、獣人と人間のハーフの場合、男の子は獣人に、女の子は人間になる事が殆どだ。
世の中こうして、上手く出来ているのである。

プリンセス・リリットは言う。
「二人共、危ないです!ネメット君が所属していたギャングの親玉が、二人を殺しにやって来ます!」
他のギャング達は殺す気まではさらさらなかったのだが、親玉だけは違った。
だから表向きにはこれは本当に、二人を殺しに来たという事なのだ。
ちなみに、魔法は誰にでも使えるといった代物では、もちろんない。
プリンス・バースでさえも使えないのであるから、遺伝だけで決まるものでもない。
「この三人の中で魔法が使えるのは、私一人!私が解決するから、あなた達は早く逃げて!」
「いや、プリンセス・リリット、実は僕も魔法、使えるんだ。父が魔法嫌いで、禁じられていたからずっと、使わなかったけど……。」
人間の少年、実は魔法使いだったのである。
その名は、啓太。

そこへ、ギャング達がやって来る。
「ここは私が何とかする!啓太はお兄ちゃんを守って、早く逃げて!」
「了解!」
プリンス・バース、啓太に連れられてテレポーテーション。
出たとこ勝負でたまたま行き着いた先は、プリンス・バースの父キング・バーデの居る玉座の間だった。

「おや、ここに天井から来客とは、誠に以て珍しい。」
キング・バーデの目の前に落下した二人。
痛みでしばらくの間、動けない。
「ギャングにでも追われているんだろう?バース、お前は悪人ではないが、血気盛んだからな。狙われやすいのは分かる。」
ここまでは二人にとっても予想通りの展開。
だが、二人の考えを他所に、キング・バーデは更に話を続ける。
「お前達、ゲイだな。しかも相思相愛と来ている。まぁお互いにフリーのようだし、付き合うのは構わん。だがな、子供は作れよ、バース。断頭台の露と消えたくなければな。」
王族だけに、ここは問答無用なのだ。
「不満そうな顔だな。何なら今すぐにここを出て行っても良いんだぞ。今なら特別に見逃してやる。学校は退学、しかも一文無しだがな。」
歯軋りしながら後ずさるプリンス・バース、啓太にとっては初めて見る表情だった。
「さぁ、どうする!」
キング・バーデ、己の少年時代と瓜二つのプリンス・バースを追い詰めた。
チェックメイトだ。

「分かった。子供は作る。だが、子育てはしねぇ!それと、こいつとの恋愛は好きにさせてもらう。」
プリンス・バース、目が血走っている。
「良かろう。リリットはどうだ?あれは正確には、実は養子でな。功ある血縁の貴族が十年以上前の会戦で戦死した折に預かった子で、お前との血の繋がりは薄いと言えなくもない。まぁ問題はなかろう。子作りにあたっては不妊治療等を活用すれば良い。何もSEXをしろと言っている訳ではないのだ。下がれ、私は忙しい。」
「はぁ!?」
空いた口が塞がらないプリンス・バース、固まったまま動かない。
今まで兄妹だと思っていた相手と、子作り。
とても考えられない。
そもそも養子だなんて初めて聞いた。
本当なのか?
頭がぐるぐると回る、プリンス・バース。
そこへ、母クイーン・イヴェルザがやって来た。
「あらあなた、またそんな嘘ついて。養子な訳がないじゃない。二人共、確かに私が産んだわ。兄妹で子作りだとか、どうかしてるわよ。恋愛だって子作りだって、自由で良いじゃない。作りたくなったら作れば良いのょ。そもそも偽装結婚やら出産やら子育てやらを全部リリットに押し付けるだなんて、有り得ないわ。大体リリットはまだ子供よ。男だからって偉そうにしないで。」
クイーン・イヴェルザはそれだけ言うと、明らかにプリンス・バースと啓太を見てウインクをし、去って行った。
これに父キング・バーデはご立腹。
「もう、好きにしろ!」
匙を投げたのだった。

かくして、やや強引な形ではあるが、プリンス・バースと啓太との関係は、晴れて公認のものとなったのだ。
プリンス・バースの寝室の天蓋付きのベッドで、二人、横に並んで。
これからツキノワグマの獣人と人間とのSEXが始まるのである。
さて、どうなるか。

「痛てて!次はもうちょっと加減してね、プリンス・バース。」
「ごめんね。僕も要領が分からなくてさ。次はきっとうまくやるね。」
あちこちに生傷。
流石は興奮したツキノワグマ。
相手の痛みなどお構いなしにさえ見える。
それでも、一応の手加減はしていたのだが。
これに、あえて無言の啓太。
でも内心では、プリンス・バースと一つになれた喜びの方が優ったのである。
その気持ちがプリンス・バースにも伝わって、気まずいながらも幸せな二人なのだった。

二人はすっかり忘れていたが、プリンセス・リリットはギャング達とまだ戦っていた。
数の違いに苦しみ、苦戦しているプリンセス・リリット。
そこへ思い出したかのように慌てて、啓太がテレポーテーションでやって来た。
啓太が魔法による電子砲で砲撃、プリンセス・リリットがお得意のミラーリングでその数を増やす。

ギャング達は一掃された。
親玉も含めて。
このタッグは強い。
喜び合う二人。
ここでプリンセス・リリットが一言。
「よっぽど慌てて来たんだね。シャツのボタン、掛け違えてるょ!お兄ちゃんとラブラブだったのかな?忙しいとこ、ごめんね!」
最後はウインクである。
啓太にしてみれば、己の失態とはいえ、これは堪らない。
顔を真っ赤にして、身悶える。
あぁ、恥ずかしい。

亜空間から突如、ミサイルがワープアウトする。
ここ日本にも多数のミサイルが現れた。
シールドを展開する間もなく、多くの民間人が犠牲となってゆく。
発射したのは、宇宙海賊トリスタンの一味。
早速全地球艦隊が出発する。
総旗艦ノイエ・ブリュンヒルデには、キング・バーデが搭乗。

ちなみに、地球艦隊の各艦艇の名前には、各国の様々な芸術作品に登場する人物の名前が用いられている。
これは言うまでもなく、獣人から人間へと向けられた、尊敬と思い遣りの念の表れである。
尚、軍属として、プリンス・バースと啓太、それにプリンセス・リリットも搭乗。
応戦を開始する。

地球軍、守りは堅いが、少しずつ押されている。
ここでリリット、総旗艦ノイエ・ブリュンヒルデの艦橋の床に、魔法陣を描く。
「みんな、下がって!インビジブル & ミラーリング!」
するとたちまち、地球艦隊が敵の視界から消えた。
しかもミラーリング効果により、味方の火力が数倍に増えた。
しかし、まだだ。
弾幕が足りない。
ここでキング・バーデが叫んだ。

「ここで退けば民の命はない!全艦、突撃ー!」

プリンス・バースと啓太、それにプリンセス・リリットは、緊急用脱出艇にて日本へと帰還する。
自分達だけ逃げ出すようで皆嫌がったが、これがキング・バーデの意思だ。
そこへ巨漢の白熊の獣人・白乃助がやって来る。
「あんたが居なくなったら、国民が気落ちするからょ。あばよ。」
それだけ言い終えると白乃助は、緊急用脱出艇にキング・バーデを放り込む。
暴れるキング・バーデを始めとする一行を乗せた緊急用脱出艇は、無事に日本へと帰還した。
他の艦も同様に、必要最低限度の人員以外は、緊急用脱出艇にて脱出する事に成功した。

ここで啓太、数ある中でも最も得意とする魔法を使う。
テレポーテーションである。
それも、地球艦隊が敵に衝突する寸前に魔法を発動、地球艦隊搭乗の全乗組員を救うというものだ。
これは非常に緻密な魔法で、繊細なコントロール技術を必要とする。
プリンセス・リリットはミラーリングが得意だが、彼女にもこの魔法は使えない。
時は金なり。
まさに。
最早、一刻の猶予もない。

ーードンっ!
啓太の目の前に地球艦隊の残りの乗組員が全員、落下して来た。
「痛てて……。」
皆一様に痛そうではあるが、無事である。
敵も無事に掃討出来た。
軍の復興には時間が必要だが、ひとまずここはめでたい。

この一件で啓太はキング・バーデに一目置かれ、宮殿内への自由な出入りが認められた。
いわゆる顔パスである。
これには、プリンス・バースも嬉しそうだ。
二人共、弾けんばかりの笑顔なのだった。

そこへ、敵旗艦イゾルデに搭乗していた、トリスタン最後の生き残り、魔法使いのベティがふらついた足取りでやって来る。
明らかに弱ってはいるが、危険だ。
「啓太、電子砲!」
プリンセス・リリットが叫ぶ。
「うぉりゃーっ!」
最大出力である。
これをプリンセス・リリットがミラーリング。
「あぁぁーっ!」
消滅するベティ。
可哀想だが、仕方ないのだ。

宮殿に帰る一行。
今晩は啓太も泊まってゆく。
宮殿の料理長は、ベンガルトラの獣人。
今夜は戦勝祝賀会。
腕が鳴る。

「諸君!卿らの勇戦を前にして、余は喜びに耐えない。完全なる勝利を祝って、乾杯!」
一同、満面の笑み。

だが、悲しい事件もあった。
最初のミサイル攻撃で、啓太の実家が吹き飛んでいたのだ。
建物は魔法で治せる。
だが人の命までは、魔法によってさえどうにもならない。
その事を知らされた啓太、号泣した。
静かな祝賀会場内で、啓太の声だけが響いていた。
啓太の両親は、息子がゲイである事に理解があった。
そんな息子を、むしろ誇りにさえ思っていた。
それを啓太も知っていたから、だからこそ涙は次から次へと溢れ出てくる。

「辛かったな、啓太君。だが君は悪くない。君の働きがなければ、犠牲はもっと多かった。お礼と言ってはなんだが、うちのバースの侍従として、ここで共に暮らさないか?」
これにはクイーン・イヴェルザも大賛成。
「そうなさいよ。あなたなら、うちのどら息子の事も上手く操縦出来るでしょうからね。仲良くやりましょ。ね?」
幸せと悲しみとが綯い交ぜになった重たい涙を流しながら、啓太は一つ、大きく頷いた。
すかさず啓太に駆け寄るプリンス・バース。
皆も集まって記念撮影。
はい、ぱちり!

-完-

自分の中では、新しい試みです。
たまにこうした作品も、出していけたらいいなと思います。
SEXシーンは例によってカットしました。
そうした描写は特に下手なので、ない方が読み易いかと。
1万ヒットを超えました。
ぼく自身のアクセスはカウントしない設定となっておりますので、これもひとえに訪れてくださいましたお客さま方のお陰でございます。
本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願い申し上げます。
関連記事

0コメント

コメント投稿