世界

空になりたいな
あの空みたいになりたいな

青い小鳥の囀りを聞きながら
海の水たちが口々に囁く

海だっていいもんだよ
何処からかそんな声が聞こえる

けれども
それでも海の水たちは羨ましがるのをやめなかった

だって空はいつでも何処までも澄み切っていて
この星がなくなっても空のままでいられて
人間たちに苛められる事もない

海の水たちはそう嘆いた

それは違うよ
ぼくたちだって苛められているんだ
どんどん汚れているんだ
何処からかそんな苦しい声が聞こえる

けれども
海の水たちはいつまでも空になりたがっている

すると突然
気まぐれなぶ厚い雲に覆われて見えなかったお日さまが
ひょっこり顔を出して
海の水たちをてっぺんから照らし出す

じゃあおいでよ!
空からのそんな声に合わせて
海の水たちは次第に空の一部になっていく

熱いよ、熱いよ
苦しそうな声に連れられて
海の水がほんの少しだけ減った

どうだい?これでぼくの気持ちが少しは分かったかい?
何処からか得意気な声が聞こえる

仲間を失い、少しだけ目減りした海の水たちは
それからは静かにひっそりと
相変わらず透き通ったままで

てっぺんから全てを見下ろす空の得意気な、けれども何処か寂しそうな顔を
羨ましそうに、恨めしそうに
じっと見つめるのだった

海はいつまでも海のままで
空はいつまでも空のまま

こうして地球はこれからも
静かに黙々と回り続ける
関連記事

0コメント

コメント投稿