ぷくぷくの詩

小高い丘の
てっぺんにある
小さな小屋に
ぼくたち二人

丸々とした
男の子です
年の離れた
兄弟でした

ぼくたちいつも
どこでも一緒
親に逃げられ
二人きりでも

助け合っては
笑いじゃれ合い
仲良くずっと
幸せでした

弟はもう
それは可愛く
ぼくはいつでも
守りたかった

たまに怒ると
頬をぷくぷく
させて泣いては
甘えるのです

それがたまらず
そんな時には
弟をただ
抱きしめました

けれど別れは
ある日突然
ぼくたち襲い
引き裂きました

いつでも笑顔
絶やさずにいた
体、丈夫な
甘えん坊の

あの弟が
笑顔忘れて
うなされる程

酷い高熱
出してしまって
下がらなくなり

お医者さんでも
治せないまま
先にお空に
旅立ちました

お別れの時
白い顔した
弟はただ
泣いていました

意識が消える
その直前に
頬をつつくと
ぷくぷくさせて

甘えるのです
ぼくはたまらず
抱きしめました

大声上げて
狂ったように
泣いていました

弟もただ
泣いていました

寒い真冬の
夕暮れ時の
寂しく辛い
お別れでした

それからずっと
ぼくは毎日
泣いていました
独りぼっちで

春が過ぎても
夏が過ぎても
何も出来ずに
泣いていました

そんなある日の
雨の夕方
小屋に小さな
荷物届いて

小さな希望
舞い降りました

荷物は白い
紙に包まれ
少しいびつな
形なのです

ぼくは勇んで
紙を破って
中を見ました
驚きました

それは小さな
鉢に植わった
ぷくぷくの木の
苗なのでした

差出人の
名前の欄を
見てぼくはただ
声を上げます

送り主の名
それは最後に
弟を診た
お医者さんの名

ぼくは育てる
決意固めて
それからすぐに
外に駆け出し

ぷくぷくの苗
植えてみました
お庭に一つ
小さな希望

それからぼくは
頑張りました

毎日お水
あげてみました
虫が付いたら
取っていました

台風の日は
囲いで覆い
大雪の日は
傘を差します

そうして時は
どんどん流れ
木はすくすくと
生長します

空まで伸びる
勢い感じ
ぼくはいつでも
眺めています

ある朝起きて
木を見てみると
小さなすもも
なっていました

それは噂の
ぷくぷくの実で
とても可愛い
すももなのです

すももは何故か
木に一つだけ
不思議な事で
目を見張ります

それでもぼくは
窓を開けたら
すももにそっと
手を伸ばします

捥いだらガブリ!
食べてみましょう
ぼくは早速
口を開けます

いただきまーす!
あいさつします
するとすももは
ぷくぷくとして

涙流して
嫌がりました

ぼくはチクリと
胸が痛んで
ぷくぷくすもも
撫でてみました

すももはポッと
紅く染まって
スッと萎んで
落ち着きました

それからずっと
捥いだすももは
ぼくの友達
仲良しでした

触ると怒り
ぷくぷくするし
お腹空いても
食べられません

だけどそれでも
幸せでした
心がポッと
温まります

すももはいつも
少し後から
そっと転がり
後を付けてて

ふと気が付くと
そばにいるので
空気みたいな
存在でした

けれど突然
別れが来ます
すももは泣いて
別れ告げます

“もう寿命だよ
お別れなんだ
お庭に植えて
育てて欲しい”

ぼくは泣く泣く
すももを連れて
ぷくぷくの木の
横に植えます

“今度逢えたら
もっと仲良く
いつでも一緒
約束するよ”

ぼくはすももに
キスをしました
すももはずっと
泣いていました

それからぼくは
毎日お水
欠かさずあげて
お世話を続け

窓辺でそっと
すももの事を
思い出しては
泣いていました

また逢えるかな?
ぼくは呟き
ぷくぷくの真似
独りしました

涙がどっと
溢れ出ました

それからずっと

雨が降っても
風が吹いても
雪が降っても
ぼくはいつでも

木の世話をして
そばで守って
愛で慈しみ
話し掛けては

すももの事を
待っていました
また逢える日を
待っていました

やがて季節が
巡り巡って
時は流れて
木は生長し

遂に小さな
実がなりました

それは噂の
ぷくぷくの実で
見覚えのある
小さなすもも

ぼくは早速
優しく捥いで
掌の上
乗せてみました

“お帰りなさい!
覚えてるかな?
また逢えたから
もう嬉しくて……”

ぼくは大声
空に響かせ
涙流して
すももにそっと

キスをしました
すもももそっと
涙零して
紅く染まって

喜びました
ぼくたちはただ
幸せでした

一頻り泣き
落ち着いてから
すももをそっと
ポケットに入れ

部屋に戻ると
ベッドに座り
すももとずっと
お話しします

すももはぼくを
覚えてました
ただ嬉しくて
ぼくは震えて

大声上げて
泣いていました
すもももずっと
泣いていました

それからずっと
ぼくたちは春
爛漫の日々
温かな日々

今日もそばには
可愛いすもも
指でつつくと
ぷくぷくします

歩けば少し
後を転がり
いつでもそばに
いてくれるから

まるですももは
あの弟の
生まれ変わりで
舞い降りたよう

甘えん坊で
いつでも一緒

またお別れが
やってきたって
その実を植えて
育ててやれば

も一度逢える
また逢えるから
ぼくは幸せ
もう独りじゃない

今日もすももは
ぷくぷく元気
甘えん坊の
“弟”なのです

解説:ぷくぷくの実について
触れると怒ってぷくぷくと膨らむ、新種のすもも。
涙腺があり、食べようとすると大量の涙を溢流させるため、食用には不向き。観賞用。一本の木につき一つしか生らない。
付かず離れずの距離で常に見守っていてあげれば、幸せになれるかも。
恥ずかしがり屋の甘えん坊。
少し後からそっと転がってきては、いつの間にかそばにいますよ。
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